Remember11読了

かなり衝撃的な作品でした。前衛的かつ尖鋭的。以下ネタバレにて感想を少々。


上辺では普通のストーリーに見えるように仕組まれた、プレイヤーを巻き込んで決して終わらない螺旋構造を持ったストーリー、というのが本来のすがた。本作を普通のストーリーと見なして接している限り、未完の粗悪品にしか見えないだろう。しかし本作は、逆説的ではあるが、物語が終わらないことで一個の作品として完成している。これは作品の物語レベルでも、プレイヤーレベルでも同じことが言える。物語レベルとは、すなわち、『本物の優希堂悟*1』が企てた計画によってプレイヤーを無限の螺旋に閉じ込めること*2という作品の根幹となる主題を指す。プレイヤーレベルとは、作品を横断的に見通すことのできる視点=プレイヤー視点を指す。つまり、こころ編でのこころの行動がサトル編に反映され、サトル編での悟の行動がこころ編に影響を及ぼすことをプレイヤーが知っている、ということである。どちらの物語も、それひとつだけでは完結せず、互いに影響を与えるという構造。また、これは悟*3の記憶移植に関しても同じことが言える。
悟は記憶がはっきりしないということを常々漏らしていた。悟が記憶していることと言えば、プレイヤーにとって既知の情報=プレイヤーがこころ編で知った悟の人物情報に過ぎない。作品中に『こころがいなければオレはオレではない』という記述があった。これは単に、『こころ編の選択肢がサトル編に影響を与える』ことと、言葉遊び*4という点だけでなく、こころ編という結果がなければ悟は記憶を持たないということをも表している。つまり、『悟=オレ』はプレイヤー視点というだけでなく、プレイヤー自身でもあるということだ。そして、悟がいなければこころ編も成り立たないということは言うまでもない。
このように、Remember11は二重螺旋的構造を抱えている。さらに、三位一体というモチーフが絡み合うことでより一層、本作はややこしい構造を持つこととなった。『こころ、悟、α』、『赤倉岳、青鷺島、第3地点』、『犬伏、穂鳥*5、αの片割れ』、『悟(本物)、榎本直哉(一人称:私)、オレ』、転移の時間=33分・・・。
以上は一部を抜き出したに過ぎないが、本作は多彩なギミックを惜しげもなく投入した玩具箱のような作品であり、ノベルゲームという形式を上手く利用したノベルゲームである。その観点からは確かに、Ever17を極端なものにした作品、と言うこともできるだろう。

*1:黒髪+スーツ+サングラス

*2:プレイヤーに終わらない物語をプレイさせること

*3:本物ではなく、視点プレイヤーとしての悟

*4:心がいなければ吾は悟ではない

*5:今思ったことだが、犬伏景子がたびたび歌う『かごめうた』は、犬伏に宿る穂鳥の意識についての伏線、あるいは示唆でもあったのだろうか?籠の中の鳥(穂鳥)は、いついつ出やる・・・